最も身近で身の丈にあった木の工作【グリーンウッドワーク】

グリーンウッドワーク 木工

グリーンウッドとは日本語で「生木」のこと。
乾燥させずに、伐採したばかりの状態の木材のことです。
この生木を、ナイフや斧を使って割ったり削ったりして生活の道具を作るのがグリーンウッドワークです。

通常の木工は、木の変形をできるだけ抑えるために、ある程度安定するまで乾燥させるのが常識です。
この通常の木工と比べたグリーンウッドワークの特徴は以下のとおり。

  • 木工より、素材の調達がしやすい
  • 木工より、使う道具がシンプル
  • 木工より、場所を選ばない

とにかく一言で表現すれば【気軽】につきます。気軽に始められるんです。
今回はこの、生活に必要な道具を自分で作るためにぜひ取り入れたい手法の一つとして、グリーンウッドワークの概要を紹介します。

グリーンウッドワークの特徴

①素材の調達がしやすい

普通の木工は、木を伐採したあとに角材や板材などに切り出して乾燥させるという、製材の過程を踏まえないと使える材にはなりません。

木の主な特徴の詳細はこちら

なので、一般の人にとっては、近くに自由にできる山林があろうがなかろうが、一度必ず、製材場、または材木屋を通して木を購入もしくは加工を依頼しなければ、木工をするための素材としての木は手に入らないんです。

Wood Dryer
乾燥をさせた後
製材場
製材を経て
製材された木材
木材となっていきます


つまり、田舎には距離的に木はたくさんあるかもしれませんが、製材となると、入手難度は地方と都市の差はそこまでないということですね。

しかしグリーンウッドワークが扱うのは生木です。


ということは、自由に伐採できる木があれば個人でも切り出せればそのまま素材となり、できてしまえるのです。
だから、グリーンウッドワークは木工よりもさらに私たちにとって行動しやすい、身近な手法といえます。

グリーンウッドワークなら伐採した木がそのまま使えるから、シンプルに木がたくさんある地方の人にはやりやすい手法だね

そうだね。正直ちょっと羨ましい

森林と距離的に近い地方でやりやすいとはいえ、都市も捨てたモノではありません。
なんだかんだ木は植っていて、あちらこちらで何かしらが毎日手入れされています。
そして、地方との決定的な違いは、そこで切られた木は十中八九ゴミとして処分されるということです。

地方だったら薪利用として一年以上乾燥させるために外に積み上げている人もいるけど、都会じゃそんなスペース無いしね

そもそも、薪ストーブとか使う家庭が圧倒的に少ない。需要があるにしてもキャンプとか公園でBBQとか、とにかくイレギュラー

なので、伐採した木を取りに来るなら持っていってほしいという需要がそこそこあるんですよ。「伐採木 無料」とかでネットで検索してみると、意外とヒットします。
ぜひ試してみてください。

②道具もシンプル

グリーンウッドワークで使う道具はナイフや手斧といった、昔からあるような、長いこと基本的な構造自体は大きく変化していないシンプルな道具たちです。

ナイフと箸

人力以外のエネルギーを必要とする機械は本当に使いません。

言葉としての認知度は高く聞いたことあるけど、キャンプとかしていないかぎり、実際所持しているという人はまずいないのがナイフや斧でしょう。
良くも悪くも簡単に手に入りますので、これを機に触れてみるのはいかがでしょうか。

ナイフはともかく手斧なんて普通の生活してたらまず触らないよね

③場所を選ばない

また、電動工具はもとより、手道具での木工と比べても、圧倒的に静かに省スペースで工作ができるのも特徴のように思います。
ナイフで木を削っている時などは、わずかに木の削れる音がするだけで、ほとんど無音に近いです。

防音設備などを整えなくても良いので、都市の自宅の一室でも、晴れた日の庭やベランダでも、近隣を気にすることなくできてしまいます。

グリーンウッド(生木)なわけ

なぜわざわざ生木を使うのかという理由を性質面からいえば、柔らかく、加工がしやすいからなのだそうです。

乾いた木を削るあの感覚に、みずみずしい野菜を切るような感覚がちょっぴり加わるような感じ

わかりにくっ!

やってみましょう(w

グリーンウッドワークは手道具を使い、作られる生活用品は総じて小物が多いです。

大きなものや、組み合わせて繋げるようなモノでは乾燥時の狂いが重要になってきますが、小さいコップやスプーンなどでは影響を考慮したり逆に利用したりすることはあれど致命的にはなりません。

電気も機械も無かった中で個人が調達し易かったという時代背景も生木が使われた一つの理由だと思います。
乾燥製材の工程をせずともすぐに使用でき、なおかつ加工し易かったということが、手道具だけで暮らす昔の人々にとって、とても都合が良かったのでしょう。
というか、生木を選ぶしかなかったので、それが正解になる手法を確立した、が、正しいのかもしれません。

日本や北欧などの昔から森林の多かった国では、古くからその場の木を使って盆や椀などの生活用品を作り消費していく、という伝統があちこちにあり、かろうじて受け継がれていきました。

柔らかくて加工しやすい?…どこかで聞いたセリフ

…そうだね。というわけで、やってみたよ

杉の廃材を使ってみた。

このサイトは木工の中でも、特に杉に重点を置いています。

柔らかくて加工しやすいというのは、杉の特徴でもありましたよね。
であれば、乾燥工程を経た杉の製材であっても、グリーンウッドワークができるのではないかと思いやってみました。

グリーンウッドではないけどね

シーっ!

箸・スプーンを作った

杉の箸とスプーン

問題無く削れます。乾燥した材でも、さすが杉。柔らかく、ガンガン削っていけました。
今回作ってみたのは箸とスプーンですが、工程別に考えてもやりづらさを感じたところは特に無し。どんな削り方も、スムーズにできます。

ただ、割り箸が杉の間伐材でできているのは有名な話。

どれだけ柔らかく脆いかがイメージできるかと思います。
なのでさすがに箸などの細いモノには不向きかと思います。

スプーンも結構太めに作る必要がありますし、杉であれば、一番適しているのは器系じゃないかと感じました。

また、乾燥させた材でも一晩水に漬けるなどで多少やりやすくなるので、乾燥させちゃった木材は全く使えないってわけでもなさそうです。

やりやすさは圧倒的に生木だけどね

使う材に限ってはガチガチにルールに縛られずに、手当たり次第削ってみて楽しんじゃったほうが学びは深いよ

やってみて感じたこと

とにかく「無心」

ただ黙って指先に集中し、ひたすら、少しずつ削り出してゆく。これはハマる人にはめちゃくちゃハマるだろうなと感じました。
もうずっと、削っていたい、いつがやめ時か迷ってしまう、そんな気すら起こさせるんですね。

なぜか。おそらく、ナイフで削るという行為が、木目の影響をものすごく受けるからだと思います。
基本木目を断ち切っていくノコギリや、木目を無視して粉々にしていくヤスリではこんなに木の木目を感じることはありません。

同じ一本の木でさえも位置によってスムーズに削り取れる方向が全く違いますので、まさに木と相談しながら、という表現がピッタリくるようにちょこちょこ削り方を変えながらやっていくので、全く単調な作業にはならないんですよね。

加えて生木であれば、その後どのように変化していくかを想像しながら削っていくのでしょうから、まさにそれは一挙手一投足が木と対話。工夫しながら形作っていくので、その行為全てが工作となります。

まとめ

素材の調達、必要な道具、作業に必要な環境など、どれを比べても木工よりもハードルが低いのがグリーンウッドワーク。

このサイトではやっぱり杉をメインとしたグリーンウッドワークを模索していく方向に多少寄ってしまうのですが、木種を問わず、今までただゴミとして片付けられてしまいがちだった多くの木材を手軽に活かすことのできる素晴らしい手法だと思います。

なんだって使える!直径数センチの枝でも出来ちゃう!

お手入れした庭木とかでもう出来ちゃう!

人によっては、生木を使うということに抵抗を感じるかもしれません。大量生産が基準の現在では、少しでも加工後の変化が少ない方がコストがかからないということで、木なら乾燥させて、というか木よりも別な素材で、が当たり前になっていますからね。

しかし歴史を辿っていくと、あえて変形していく生木の特性を逆に利用していたりもしているんです。

例えば、グリーンウッドワークの手法を利用して作られるイスは、生木から切り出した材にホゾ穴を開け、それよりもあえて少しだけ乾燥させた材に、気持ち穴より大きめでホゾを作ってギュッと差し込みます。穴側は生木ですので、その柔らかさで多少広がりちょっと大きめのホゾが入るんです。
どうなるかというと、乾燥している材は生木から水分を吸収して大きくなり、生木材は乾燥していって縮まります。
この動きを利用すると、釘などを使わずとも堅く繋げられるそうで、伝統としてこういうやり方も残っています。

昔の人ってすんごい工夫するね

古くて新しいと言えるグリーンウッドワーク。
最も「木と対話」ができる木工です。

自分が使うものを自分の手で、何日もかけて作ってみるということを、長い人生に取り入れてみませんか。

最後まで読んでくれてありがとう!
またね!

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